韓日新時代フォーラム2021年10月月例会
■日時:2021年 10月 25日(月) 18:30-20:20
■場所:東西大センタムキャンパス 地下1階 コンベンションホール
■プログラム:
- 夕食会(18:30-19:00)
- 講演会(19:10-20:20) 司会:趙 堈熙(釜山大学 前副総長)
テーマ:「認識と誤解-なぜ日本と韓国はお互いを嫌うのか?-」
講演者:金 珍基(釜慶大学 教授) / 林 錫俊(東亜大学 教授)
指定討論:全洪燦(釜山大学 教授)
(※ 日韓同時通訳にて進行)
■行事の写真:
■行事の要約:
韓日新時代フォーラム 10月月例会
金珍基(釜慶大学教授)/林錫俊(東亜大学教授):「認識と誤解-なぜ日本と韓国はお互いを嫌うのか?-」
10月25日(月)、釜慶大学の金珍基教授と東亜大学の林錫俊教授による共同基調講演「認識と誤解-なぜ日本と韓国はお互いを嫌うのか?-」が行われた。
先ず、4月の基調講演での小此木教授の「韓国が民主化と経済成長を遂げ、日韓は民主主義と市場経済体制を共有しており、それが認識共有の基盤となっている」という主張を振り返った。そして、その主張とは異なり、両国民の相互非好感度が歴代最高値を示し、領土・慰安婦・教科書問題等の特定事案から外交・経済・民間分野にまで日韓の葛藤が広がっている現状に対し、「なぜ日韓両国は体制を共有するが、認識は共有できないのか」という疑問を提起した。
次に、国際政治学者ケネス・ウォルツの新現実主義の視点から、日韓の葛藤の理由を、個人・国内政治・国際体制という3つのレベルで説明した。個人レベルでは、積廃清算という国内政治レベルで日韓関係を扱った文在寅政権を反日親北、歴史修正主義政策をとった安倍政権を保守右翼と見る両首脳の相互認識が変わらない以上、葛藤は避けられないとした。国内政治レベルでは、韓国の民族主義は反日と親日清算を掲げる左派主導、日本の民族主義は平和憲法改正と戦後体制清算を目指す右翼主導で、相反する極端な民族主義が衝突していると語った。国際体制レベルでは、冷戦後に共産主義という共通の脅威が消え、台頭した中国への対応の差が葛藤を招いていると説明した。
また、「トゥキュディデスの罠」に言及しながら、日韓の国力の格差が縮まったことで、韓国には「新興勢力症候群」の傲慢さが、日本には「支配勢力症候群」の被害妄想が現れているのではと指摘した。各種経済指標で日韓の格差が縮まり、映画・ドラマ・芸能等のソフトパワーで韓国が日本を凌ぐほどになる中、両国の国民や政治指導者に見られる相手国への神経質な反応は、この「症候群」で説明できる部分があると語った。
そして、長期的には日韓の体制共有により相互理解と協力が増すにしても、格差が縮小する過程で葛藤が生じるとし、それを「認知不調和」という心理学用語で説明した。日韓両国は相手国に対する過去のイメージにとらわれており、国力の変化で生じた現実の相手国の姿とのギャップに認知不調和を起こしているというのである。イメージと相反する認識を拒否することで不快な心理的状態を解消しようとしているのが、現在の日韓間の葛藤ではないかと語った。
最後に、昨今の日韓関係は黒澤明監督の映画「羅生門」に似ているとし、相互誤認は視点の違いに起因しており、本来はプラスの現象である日韓の国力の相対的変化が、むしろ誤認の拡大を招いていると語った。そして、日韓関係が体制共有に安着するには、韓国は日本のあらゆる言動を被害者の視点から見ることを止め、日本は韓国の成長を自国にも有益なものとして認知し、両国が相互に誤認を取り除いていく努力が必要であると述べ、講演を終えた。